データの高速化、大容量化によって生まれる問題として、もう一つ悩まされたのがノイズです。データを高速処理するデバイス動作によって、ノイズは不可避的に発生します。イメージ的にはラジオに飛び込んでくる違法無線のような妨害電波ですが、数100MHzからGHz帯の高周波ノイズなので、厄介なことに耳に聴こえるわけではありません。このノイズは各デバイス間のデータ通信を阻害するばかりでなく、オーディオ機器や、自動車側の制御コンピューターへの影響なども懸念されるため、世界的に厳しい規格が設けられています。デバイス動作がノイズを生むのですから、回路内のスイッチを切って通信を止めてしまえば完全にノイズは止まります。しかしそれではデバイスが機能しなくなりますから、ノイズと動作のバランスを取るしかありません。日夜、計測器を睨みながらのシミュレーションとテストを繰り返す日々が続きました。幸いにもアルパインには、車両が発するノイズを測定できる最先端の設備が完備されていて、このテスト時に威力を発揮しました。
その一方で、人間の耳に聴こえるノイズについても、大きな壁が存在しました。機能を切り替えた時のクリックノイズと、切り替わった後の音量バランスの問題です。これも、従来のようなボリューム部の接触不良などによる単純な問題ではありません。切り替える際、機器間でデータ通信を行なうわけですが、多機能化したこともあって、複数のシステム機器を同時にコントロールする際は、極めて高いマッチング精度が求められます。対策としては、各ユニット間でのシステムの不整合を地道に探し出すしかありません。最新デジタル製品開発にも、最後は人による地道な作業、経験が生むノウハウが必須という摂理を思い知らされました。
苦労の甲斐あって、DVD-Audioも2回目のシステム組合せテストでは、音が出る所まで漕ぎつけました。「おおー!出た、出たぞ。ついにDVD-Audioの音が聴けた!」と無邪気に喜びました。感無量でしたね。それは同時に、最大のテーマである「最高の音作り」のステージへの扉が開かれた、と云う事でした。 |